脱「名峰」 低山歩きの美学 標高1500メートル以下(産経新聞)

 ■頂上目指さず「寄り道」も

 山国・日本で、その大半は標高1500メートル以下の低山に属する。「『静かな山』としての魅力がある低山歩きは頂上に立つことを目的としないため、中高年以上の癒やしの登山にうってつけ」と専門家は話す。地図を片手に、珍しい樹木や石仏群に出合ったり、神社に参拝したりと寄り道も自由。低山に山歩きの原点を見つけたい。(日出間和貴)

 ◆自然と触れ合う

 深田久弥の名著『日本百名山』(新潮社)で紹介されている名山の中には筑波山(茨城県、877メートル)のように1千メートルに満たない低山も含まれるが、その多くは名峰の類だ。日本人の“ブランド信仰”は根強く、毎年、夏山シーズンを迎えると、槍ケ岳に向かう「アルプス銀座」の登山ルートは登山客でごった返す。

 季刊誌『山の本』(白山書房)編集・発行人の簑浦登美雄さんは「百名山志向は相変わらずで、旅行会社のツアー登山も依然、人気が高い。しかし、一極集中は好ましいことではなく、登山者が多ければそれだけ自然にダメージを加えることになる。山へ出かける目的が自然と触れ合うことなら、人の少ない山の方がふさわしい」と指摘する。

 各地の低山の魅力について紹介した『癒される低山ウォーキング』(明治書院)を4月に出版した山岳紀行作家、石井光造さんは「山の価値は高さではない。登山の目的は頂上に立つことではなく、その過程にある」と繰り返してきた。「頂上は行けたら行く」が持論だ。

 観光ガイドに紹介されていない低山はどこも人がまばら。その分、山の奥深さを心ゆくまで堪能できる。「静かな山」に山の品格や本質を見いだしてきた石井さんは「非日常の体験をしたいと思ったら低山に限る。地形図を読み解くという点でも、低山は自分の頭と足を使った主体的な登山を可能にする」と話す。

 ただ、注意しなければいけないのは、低山は登山客が少ないため道案内が不親切であることが多い。山の危険は高い山と変わらず、悪天候になったら途中で引き返すぐらいの潔さが大切だ。GPS(衛星利用測位システム)に頼り切った登山も危険がいっぱいという。

 ◆こだわりを見つける

 一方、イラストレーターの小林泰彦さんは『日本百低山』(文芸春秋)で、山の持つストーリーや伝説を名低山の条件に挙げる。その一つ、高野山(和歌山県)の墓碑群を歩いた際の印象を「延々2キロほどの間、日本史の中をさまよう気分を味わった」と感慨を込めて記している。

 『日本山名事典』(三省堂)によると、全国に「富士」の名のつく山は213あり、その8割以上は1500メートル以下の低山に属する。石井さんは「山に登る楽しみは計画を立てるところから始まる。山の名前や歴史にこだわって登る山を決めるのも楽しく、未知の発見は何かにこだわることで生まれる」と強調する。

 山の恩恵を感じながら心の自由を求める登山を実践するには、工夫と知恵も必要なようだ。

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 ■「ゆる登山」にも広がり

 大自然に身を置いて、普段よりもゆっくり山を登る「ゆる登山」が女性愛好家の間で広がっている。「登山」という堅苦しさから脱し、立ち寄る温泉などを含めた山行を満喫しようというもの。登山家の田部井淳子さんが呼びかけ、昨年誕生した「MJリンク」は、20代〜40代の“山ガール”のためのネットワーク。山登りの楽しさを次世代に伝えていくことが会員の条件だ。

 また、山と溪谷社は4月、登山情報サイト「Yamakei Online」ベータ版を立ち上げた。初心者の登山をていねいにサポート、幅広い情報提供が注目されている。

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